簿記を取れば転職で有利になるのか。答えは求人次第だ。資格が応募条件を満たす求人もあれば、月次決算や原価計算の経験がなければ選考で評価されにくい求人もある。
管理・事務経験者が見るべきなのは、資格の有無だけではない。効く場所を探す。求人が任せたい作業、自分が担当してきた範囲、入社後に広げたい仕事を並べると、簿記を使う転職と使わない転職を分けられる。
簿記を持っているだけでは転職の有利さは決まらない
簿記は、仕訳や財務諸表の仕組みを学んだことを示す資格だ。ただし万能ではない。採用側が求めるのが請求書処理なのか、月次決算なのか、予算管理なのかによって、資格の使われる場所が変わる。
転職で有利になるとは、資格だけで採用が決まることではない。意味を分けよう。応募条件を満たす、書類で知識を示す、未経験業務への学習姿勢を伝えるなど、資格が選考のどこで働くかを見定める。
資格が効く場面を三つに分ける
- 必須条件として、求人が指定する資格名と級に一致するか確認する
- 歓迎条件として、求人が指定する資格名と級を職務経歴書に記載する
- 実務経験と組み合わせ、応募先の業務との接点を面接で説明する
必須条件では、求人が指定する資格名と級を確認する。歓迎条件なら話は別だ。職務経歴書には、保有資格に加えて経験した作業、使用した会計ソフト、締め日までの進め方を記載する。
資格が評価されにくい原因は、求人の仕事と結び付いていないこと
履歴書の資格欄に簿記を書くだけでは、採用側は何を任せられるか判断しにくい。原因は単純だ。資格が示す知識と、求人が求める実務の接点が説明されていない。
たとえば売掛金管理の求人なら、請求書発行、入金消込、未入金確認までの担当範囲を見る。月次決算なら違う。仕訳入力だけか、勘定科目の残高確認、前払費用の振替、試算表作成まで担うかを確認する。
資格名を作業名へ翻訳する
職務経歴書では「簿記を取得」と書いて終えない。作業へつなげる。会計知識を使って担当した仕訳、経費精算、債権管理、固定資産管理、決算補助を記載し、応募先の業務と重なる箇所を面接で説明する。
| 求人の業務 | 確認する実務 | 職務経歴書と面接で伝える内容 |
|---|---|---|
| 日常経理 | 仕訳入力、請求書処理、入出金管理 | 担当した作業と、勘定科目や取引の流れとの接点を記載する |
| 月次決算 | 残高確認、振替処理、試算表作成 | 決算で担当した範囲と、応募先の業務との接点を説明する |
| 原価管理 | 製造原価の集計、配賦、差異確認 | 工業簿記の学習内容と実際に担当した集計作業を分けて記載する |
| 管理会計 | 予実管理、部門別集計、経営資料作成 | 集計、分析、報告のうち担当した作業を記載する |
一般事務と管理部門の専門職では、資格の役割が違う
管理・事務という職種名だけでは、簿記を使う頻度を判断できない。幅が広い。データ入力、庶務、営業事務、経理、財務、経営企画では、会計知識を使う作業も評価基準も異なる。
一般事務では、文書作成、電話対応、備品管理などが中心の求人もある。その場合は簿記が主役にならない。経理補助を兼ねるなら、請求書処理や経費精算を担当する場面で知識を使える。
管理部門の専門職では、資格より担当範囲を細かく見られる求人がある。確認は具体的にする。決算の主担当か補助か、税理士へ渡す前まで担当するか、子会社や海外拠点の数値を扱うかを聞く。
人材紹介会社が扱う求人の一例として、当社ユナイテッドワールドが掲載している管理・事務領域の求人には、次の傾向がある。
⚠ これはユナイテッドワールド1社の在庫であって、管理・事務業界全体の求人構成ではない。記事で使う際は「人材紹介会社が扱う求人の傾向」として書き、業界全体の話にしないこと
これはユナイテッドワールドが預かる求人だけの傾向であり、管理・事務業界全体の構成を示すものではない。範囲は限られる。当社の取扱求人は管理部門の専門職に限られ、一般事務は含まれていなかった。一般事務を希望する場合は、利用する求人サービスの掲載職種を確認する。
実務経験がある人は、取得前に伸ばしたい担当範囲を決める
管理・事務の実務経験者は、資格取得を目的にしない。順序を変える。次の職場で日常経理から決算へ進みたいのか、経理から管理会計へ移りたいのか、担当範囲を先に決める。
日常経理から月次決算へ進むなら、締め処理が必須条件か歓迎条件かを求人ごとに確認する。差がある。未経験から採用する求人では、引き継ぎや研修の有無を調べ、担当経験と支援体制をセットで判断する。
原価計算や管理会計へ進む場合は、会社の事業構造も見る。ここで差が出る。製造業なら材料費や労務費の集計、事業会社の管理会計なら予算編成や部門別損益など、求人ごとに作業を分解する。
資格取得を先送りしてよい求人もある
資格の指定がない求人では、未取得だけを理由に応募対象外とはならない。ほかも確認する。経験年数、業界経験、システム利用経験など、資格以外の必須条件を満たすか調べてから応募を決める。
求人票では資格欄より担当範囲と働き方を読む
簿記を生かせる求人かどうかは、資格欄だけでは決まらない。業務欄を読む。日常経理、決算、税務、予算管理のどこからどこまで担当するかを抜き出し、自分の経験との差を並べる。
同じ経理職でも、働き方は締め日と分業体制で変わる。確認が要る。経費精算の承認期限、月次決算の進め方、繁忙期の業務、在宅勤務時の証憑確認などを面接で聞く。
面接で資格の効き方を確かめる質問
- 資格は応募条件、配属判断、昇格要件のどこで使われるか
- 入社直後に担当する仕訳や帳票は何か
- 月次決算で本人が判断する作業はどこか
- 会計ソフトと経費精算システムは何を使うか
- 税理士、監査法人、社内各部門との分担はどうなっているか
- 業務の引き継ぎ、研修、確認者は用意されているか
資格手当や昇格要件に含まれるかも確認する。ただし分けて考える。手当が付くことと、希望する決算業務や管理会計を担当できることは同じではない。
応募前に資格、経験、希望業務のずれを判定する
最後は、資格を取るかどうかではなく、その求人へ応募するかを決める。表に落とそう。資格条件、経験済みの業務、未経験の業務、会社の支援、希望する働き方を求人ごとに並べる。
| 確認項目 | 自分の現状 | 応募先 | 判定基準 |
|---|---|---|---|
| 資格条件 | 保有する資格名と級、学習中または未取得 | 求人が指定する資格名と級、必須または歓迎 | 資格名と級が求人の指定に一致するか |
| 資格の用途 | 資格を使いたい場面 | 応募条件、配属判断、昇格要件、資格手当、実務では不使用 | 希望する場面で資格が使われるか |
| 担当業務 | 経験した作業と担当範囲 | 入社直後に任される作業 | 経験が重なる箇所はどこか |
| 未経験業務 | 今後広げたい作業 | 決算、税務、原価、予算管理など | 希望する仕事へ近づけるか |
| 支援体制 | 必要な研修や確認者 | 引き継ぎ、手順書、上司の確認 | 未経験部分を補えるか |
| 働き方 | 残業、在宅勤務、繁忙期の希望 | 締め日、分業体制、出社条件 | 続けられない条件がないか |
資格条件を満たしていても、希望業務を担当できなければ転職目的から外れる。逆もある。資格が歓迎条件にとどまり、経験業務が求人と重なるなら、未取得だけを理由に候補から外す必要はない。
不明な欄は面接で確認する。判断を急がない。簿記が有利かという問いを、応募できるか、任せられるか、希望する担当範囲へ進めるかに分解すれば、資格の効き方を求人ごとに判定できる。